2008年7月5日土曜日

為政(いせい)第二-七

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子游問孝、子曰、今之孝者、是謂能養、至於犬馬、皆能有養、不敬何以別、

子游(しゆう)、孝を問う。子(し)曰(のたま)わく、今の孝は是れ能(よ)く養うを謂(い)う。犬馬(けんば)に至(いた)るまで皆(みな)能(よ)く養う有り、敬(けい)せずんば何を以て別(わか)たんや。

子游が孝のことをおたずねした。先生はいわれた「近ごろの孝は[ただ物質的に]十分に養うことをさしているが、犬や馬でさえみな十分に養うということがある。尊敬するのでなければどこに区別があろう」
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■本物の「尊敬」こそが、組織を強くする。

 近頃は、物質的に不自由をさせなければ良いとされているが、これでは犬や馬と同じだ、と孔子は言う。そこに尊敬の心がなければ、それとどう違うのか、と。近頃は、核家族化が進むところまで進み、世代間の助け合いや知恵の継承、子供たちへの躾が徹底していないようだ。
 これは昨今の企業内でも大きな問題と言えよう。現在各メーカーでは、特に生産の現場で、職人芸的なスキルを後輩たちに継承するため大変な苦心をしているという。そもそも「孝」の本質が会社に浸透していないから、「尊び」「敬う」精神もなく、皆社員は役職や地位に対して頭を下げている。人間としての「社長」「部長」に心酔して頭を下げているのではない。これは管理職としてのビジネスマン全員に関わる初歩的な欠点である。だからこそ、いざという会社の危機に、組織が一体となって機能しないのではないか。人間、危機的な状態に陥って、まず何に頼るのかと言えば、地位や権限ではなかろう。その人間としての真実であり、信頼であり、迫力であるはずだ。口先ばかりの役職者に頼る者などいない。結局強いのは、人間としてのバックボーンがしっかりしているかどうかなのだ。
 日頃から、部下として上司に孝行をしようと考えているのなら、心底からその人に尊敬の念を持って仕えるべきだ。そうすれば、上司は上司らしく、部下に対応するのではないか。いざという時、親が子供に対して、命を賭しても守ろうとするのは、ひとえにこのような感情からなのだ。上っ面で役職に頭を下げている者に対して、上司は部下に命を投げださないものだ。

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