2008年7月9日水曜日

為政(いせい)第二-二十二

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子曰、人而無信、不知其可也、大車無輗、小車無軏、其何以行之哉、

子(し)曰(のたま)わく、人(ひと)にして信無くんば、其の可なるを知らざるなり。大車(だいしゃ)輗(げい)無く、小車(しょうしゃ)軏(げつ)無くんば、其れ何を以て之を行(や)らんや。

先生がいわれた、「人として信義がなければ、うまくやっていけるはずがない。牛車に轅(ながえ)のはしの横木がなく、四頭だての馬車に轅のはしの軛(くびき)止めがないのでは[牛馬を繋ぐこともできない]一体どうやって動かせようか。」
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■ 信無くば成功なし。信を蓄えることをもって自らの成長とせよ。

 輗も軏も、牛馬と車両を繋ぐ重要な器具である。これがなければいくら名馬とは言え何の役にも立たないということだ。それほど、人間にとって重要なものが「信」である、と孔子は説く。この「信」の重要性は、『論語』の中に十数カ所出てくることでも言えよう。
 儒教でいうところの「徳」、中でも「五徳」といわれる「仁・義・礼・智・信」は、教えの中でも最重要の概念である。またその中でも信は、他人との関わりの中でこそ活かされる哲学と言えよう。人は、人から信じられてこそ、その才を活かすことができる。人は、人を信じることから、その愛を発揚することができるのだ。
 競争を大前提とするビジネス社会においても、この信は、各人が最も大事にすべき人間関係のエッセンスと言える。いにしえの昔から「商売は商品を売るのではない。信用を売れ」と言われてきた。顧客を信じよ。マーケットを信じよ。顧客から信用されよ。部下や上司から、同僚からも信用されるビジネスパーソンこそが、成功を手にするのだ。この一点は、商売の先達たちの数々の格言にも必須の言葉と言えよう。
 また人が人を用いるに際しても、「使用」から「任用」そして最後に「信用」と行き着く。これが最も貴い人物の活用方法だと言う。「信を得る」ということは、人として最も名誉なことなのである。「信無くば立たず」それくらいの意気込みで、毎日を働きたいものだ。信義、信仰、信心、信任、信奉、信念、信望、信認、信頼…。これら信にまつわるすべての言葉をもって、日々、自らの行動を照らしたいものだ。

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