2008年7月10日木曜日

里仁(りじん)第四-十二

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子曰、放於利而行、多怨、

子(し)曰(のたま)わく、利に放(よ)りて行えば、怨(うらみ)多し。

先生がいわれた、「利益ばかりにもたれて行動をしていると、怨まれることが多い」
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■義を省みずに利ばかりを追えば、やがて破滅する。

 “利”は宝でもあるが、“恨み”の種でもある。お金持ちは、羨ましがられることはあっても、他人からの同情や好意を得ることは稀である。それは“利”とは、プラスとマイナスが表裏一体であることを人は知ってるからだ。いま私たちは“ゼロサム社会”に生きている。プラスを得る人の裏には、必ずマイナスを押付けられる人たちがいる。株式しかり。安値で買いたたき高値で売り抜ける人がいれば、高値をつかまされて安値で売らされる人がいて、株式市場は成立する。全員が同様の利益を取れるルールではない。
 地球規模の環境問題も同様だ。先進諸国が世界中に有害物質をばらまきながら経済発展をしてきた。いま発展途上国がその損害を受けて四苦八苦している。しかし発展途上国がいまになって有害物質をばらまくことに、先進諸国は圧力をかける。まさに早い者勝ち、強い者勝ちの論理だ。そこに、先進諸国と発展途上国の間に「仁」のある利益配分などは無い。
 しかしこのような現実の中、先進諸国の一部には、そのルールを修正しようとする動きもある。たとえばチョコレートの場合、食品原料を徹底的に安値で買いたたき、徹底的に現地生産者を搾取していた企業が、“適正価格”を支払うことが消費者に好感を持たれることに気づいた。他国の労働者を奴隷のような働かせて作った安いチョコが、甘く美味しい訳ではなくなったのだ。また“ブラッドダイヤモンド”ともいわれるアフリカ紛争地区産のダイヤモンドの場合、そのダイヤモンドを先進国が買うたびに武器が供給され、人命が失われていることを知った婦人たちが、その宝飾品を自慢気に身に付けることが恥ずかしくなったのだ。
 ビジネスは利を取るにあるが、そこには義が必要だ。孔子の教えは、ビジネスという競争の世界においても、人としての道を忘れるな、と説いている。

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