2008年7月9日水曜日

里仁(りじん)第四-三

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子曰、惟仁者能好人、能惡人

子(し)曰(のたま)わく、惟(た)だ仁者のみ能(よ)く人を好み、能く人を悪(にく)む。

先生がいわれた、「ただ仁の人だけが、[私心がないから、本当に]人を愛することもでき、人を憎むこともできる」
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■仁者は、人を愛すも憎むも真剣勝負。それは深い人間愛があればこそなのだ。

 真に仁ある人のみが、本当に人を愛することもでき、人を憎むこともできる。仁者に私心はない。人間すべてを愛する心をもってすれば、自分の利害によって、正邪の判断を見誤ることはないのだ。良いことを良いとし、悪いことを悪いとする。
 ふつう人は、自分の行いや考え方が曲がっていれば、善悪の見境もつかなくなるものだ。いつも中途半端な価値判断で、複雑な人生を歩まなければならない。そこに人生の苦楽が生まれてくる。孔子が言うように、人間愛に基づいた仁の哲学を心に秘めていれば、その見識も自ずと正されよう。真に人を愛することができず、また悪に対しても弱腰な態度で生活することが、ほとんどの現代人にとっては、胸が痛くなるような指摘だ。
 ビジネスにおいて、仁者たることは、難しい場面も多いことだろう。「清濁併せ飲め」などと言われることもあろう。こういう場合は、短期的な見方をするのではなく、長期的な視点で判断をすべきだ。正しいことは正しいと、正々堂々のビジネスをしていれば、結局は長期的な利益をえることができる。目先の利益を追ったがために、結局は後日に大損害を被る話は枚挙にいとまがない。これすべて、経営者など最高責任者が仁者ではないことからくる人災だ。

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