2008年7月5日土曜日

為政(いせい)第二-六

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孟武伯問孝、子曰、父母唯其疾之憂、

孟武伯(もうぶはく)孝を問う。子(し)曰(のたま)わく、父母は唯(ただ)其の疾(やまい)を之憂(うれ)う。

孟武伯が孝のことをたずねた。先生はいわれた、「父母にはただ自分の病気のことだけ心配させるようにしなさい[病気はやむを得ない場合もあるが、そのほかのことでは心配をかけないように。]」
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■上の世代がいたからこそ、自分が有る。これを敬い、活かし、次に繋げ。

 孔子は、親孝行とは自分の病気のことだけ心配させて、後のことは気に病まないですむようにしてあげることだと説いている。しかし東洋思想の大家・故安岡正篤先生のこの文の解釈は、少々違う。そもそも「孝」という字は「老」すなわち先輩・長者に「子」を合わせたもので、「連続・統一」を表す文字で、つまりただ単に親を大事にして、親に尽くすという意味だけではなく、親子・老少、先輩・後輩の連続・統一をも表しているという。また「疾」は、『呂氏春秋』によると「あらそう」と同義だとか。つまり「連続」ではない「断絶」と解釈でき、親はただ子供との断絶を憂える、という。
 どちらが正解か、ではない。どちらも正しい。孔子の説く哲学「徳」は、上を敬い、下を労り、「仁」という「愛」で世の中を平和にしようという考え方なのだ。いつの時代も「今時の若者はなっていない」と嘆いている。古代エジプトの文書にもこの“嘆き”が記されているとか。古今東西、世代間の軋轢は、皆の悩みの種だったのだ。であれば、私たちのなすべき態度はどうあるべきか。先代に伝わった知恵や技術を尊び、先輩や上司を尊敬する態度から、良好な人間関係が構築できるのではないか。これはビジネスのあらゆる場面で言えることである。現代は、年上の部下を持つような時代にもなった。だからこそ、それぞれの地位や役職の前に、一人の人間として、人間同士の関係をどう築くか、これはリーダーとしての最も重要な課題なのだ。

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