2008年7月2日水曜日

學而(がくじ)第一-二

──────────────────────────────────────────
有子曰、其爲人也、孝弟而好犯上者、鮮矣、不好犯上而好作乱者、未之有也、君子務本、本立而道生、孝弟也者、其爲仁之本與、

有子(ゆうし)曰(いわ)く、其(そ)の人と為りや、孝弟(こうてい)にして上(かみ)を犯(おか)すを好む者は鮮(すく)なし。上を犯すを好まずして乱を作(な)すを好む者は未(いま)だ之れ有らざるなり。君子は本(もと)を務む、本(もと)立ちて道生ず。孝弟なる者は、其れ仁(じん)を為すの本か。

有子がいわれた、「その人柄が孝行悌順でありながら、目上に逆らうことを好むような者は、ほとんど無い。目上に逆らうことを好まないのに、乱れを起こすことを好むような者は、めったに無い。君子は根本のことに努力する、根本が定まって初めて[進むべき]道もはっきりする。孝と悌ということこそ、仁徳の根本であろう。」
──────────────────────────────────────────
■家庭を大切にせよ。本当に大切なものは何か。原点に立って思考せよ。

 有子は孔子十哲の一人ではないが、曾子と並ぶ賢人と言われている。『論語』の編纂は有子と曾子と門人たちがやったので、特に「子」という敬称を付けている。
 日頃、家庭で親孝行な者、つまり家庭円満な者は、会社でも上司に逆らったり、問題を起こしたりすることは少ないものだ。別の見方をするなら、良き会社員(組織人)となりうるには、良き家庭教育がなされなければならない、ということだ。人間教育の原点は、あくまで家庭にあるのだ。そこで、父から厳しさ、母から優しさを学んで人は成長する。
 昨今、人間の基礎教育である家庭教育が崩壊しているから、企業の大卒新入社員研修でも、全くバカバカしいほどの一般常識から教えなければならない。挨拶の仕方や敬語から教えるのは当たり前となっている。このような現状を生み出した現代の日本社会は、マンパワーが重要だと言われつつも、ものすごい遠回りの教育を経なければならない時代となった。他のアジア諸国と比べるのはどうかとも思うが、貧しくても幸福感と人間の絆が強い国々を見るにつけ、この国の将来が心配になってしまう。だからこそ、ますますこのような東洋の古典思想や儒学の復権を願うものである。
 またこの項の後半部分にもある通り、良き人物は、事の本質を大切にする。リーダーとしてのコンピテンシー(業績優秀者が保有している能力)もまた、まさに原理原則を基本ベースに思考するものだ。決して枝葉末節の論議に巻き込まれない。現点がしっかりしていなければ、仕事の方向性も定まらないのは当たり前である。企業で言えば「理念」「戦略」が明確で正しくなければ、すばらしい成果は挙げられない。これは個人ついても言えることだ。人として正しい行為を積み重ねなければ「仁徳」のある人格には昇華できない。

0 件のコメント: